現地調査報告

Part 10 2011年9月22日〜11月15日

むずかしいけど、やりがいのある聞き取り調査

事務局 金丸友香

  9月22日から11月15日までという日程でフィリピンに滞在し、マニラを中心にダバオ、バコロド、イロイロで残留2世らと面接し、聞き取り調査を行った。私にとっては二度目のフィリピン滞在ということで、言われるまま仕事をこなすので精一杯だった前回よりも、周りを見る余裕が少し持てたように思う。


  聞き取り調査ではマニラとはまた違った雰囲気の地方の都市を訪ねることや、たくさんの残留日本人の方やその家族にお会いし直接お話を聞けるということがとても楽しみではあるのだが、一口に「面接」「陳述書作成」と言ってもなかなかスムーズに行くものではない。


  特に日系人家族が面接を受けて陳述書を作成するのが初めてという場合は、かなりの時間がかかることがある。 今まで2世が断片的に持っていた記憶や情報をつなぎ合わせて時系列にまとめ、一つのストーリーを書き上げなければいけないからだ。2世自身も系統だって話を整理したことがないので、途中で話が矛盾し始めてしまったり、話がとんでしまったりということも少なくない。また、遠い昔の出来事のかなり細かいところまで思い出してもらうことが必要なため、一つのことを聞き出すのに角度を変えながら質問を重ね、なんとか少しでも多くの情報を得ようと聞き取るこちらも頭を使う。陳述書が完成する頃には達成感を大きく感じながらも疲労がどっと来ることもある。


  また、一度面接を終えた人でも、陳述の取り直しが必要という場合もよくある。上で書いたように丁寧に聞き取りをしても、あとで読んでみるとどうしても噛みあわない部分が出てきてしまったりするからだ。これを2世とともにじっくりと話を整理しながら、最初の面接後の調査で新たにわかった事実も付け加えていく。また、裁判所や法務局に提出する陳述の場合は、1世が渡比した時の話から、1世の結婚、2世の誕生から、2世の現在の生活に至るまで(陳述者が3世の場合は、3世の現在の生活に至るまで)を含めなくてはならないため、膨大な量となる。法務局や裁判所はとても厳しい目で陳述書や証書類を見るため、少し情報が足りないだけでも指摘が入ったりする。だから、必要な情報をすべて含めたか、話に矛盾はないかなど非常に気を使い、丁寧に仕上げなくてはならい。


アシユ姉妹インタビュー.JPG

日系二世の姉妹と。右端はマニラ事務所のスタッフ

  私が業務に不慣れなため時間が余分にかかってしまうということもあるのだが、「面接」「陳述書作成」というのは多くの時間を要し、2世の方々にとってもエネルギーのいる作業だ。午後の2時に約束し事務所に来てもらっても、前の面接が長引き、1時間以上待たせてしまうこともある。それでも、どんなに待ち時間が長くても、こちらがしつこく質問を繰り返しても、面接のために半日つぶれてしまっても、「こういうものだとわかっているから大丈夫だよ」と言ってくれたり、帰り際に何度もお礼を言ってくれたりする。また、自宅にお邪魔しての面接では、パソコンやプリンターのために電気を使わせてもらった上に、おやつや時には夕食までご馳走になったこともあった。


  このように、仕事や他の面においても私は優しく大らかなフィリピンの人々におおいに助けられている。更に、現地の業務に慣れていない私をサポートしてくれ、日常生活の相談にまでのってくれるマニラ事務所のスタッフ2人の助力の大きさは言うまでもない。今は助けてもらうばかりだが、「来てくれてありがとう」と喜んでくれたり「どうかお願いします」と頼りにしてくれる日系人の方々や日系人会のスタッフのために貢献できるよう、これからも全力を尽くしていきたいと思う。